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2017/10/30 Updated

標高1500mでブナの植林。苗木は自分で掘り採り。めざすは295年後の世界自然遺産!

活動日
2017年6月17日(土)18日(日)
活動場所
長野県下高井郡木島平村 カヤの平高原牧場

活動レポート

5年目を迎えたカヤの平高原のブナの森づくり

森ライの森づくり活動の中でもいろいろな面でユニークなカヤの平高原牧場でのブナの森づくり。最初に現地の下見をしたのは2012年のこと。翌年の2013年から森づくり活動を始め、今年で5年目のシーズンを迎えます。昨年は遅霜の被害に遭い、多くのブナの稚樹が葉を枯らしてしまいましたが、今年は元気に若葉を広げていました。
とってもユニークなブナの森づくり

青い空に白い雲、最高の天気の中で森づくり。

カヤの平高原の森づくりがユニークなのは、使われなくなった牧草地にブナを植えていること。しかも、通常は植林をするときは苗木屋さんから苗を買ってきて植えますが、ここでは自給自足。原生林と牧草地の境界(林縁部)にある実生の稚樹を掘り採って牧草地へ移植しています。その場所にあるものを掘り採って植えるのだからお金もかからないし、遺伝子的にも何の問題もありません。エコノミーかつエコロジーな森づくりです。 そして、日本の森づくりでいちばん労力を必要とする夏の下草刈り作業が不要です。ブナは、雪が解けると他の植物に先駆けて葉を開き、一気に1年分生長してしまいます。その後はじっくり栄養を貯えながら次の春を待つだけです。ブナは代表的な陰樹で光が燦燦と降り注ぐ場所よりも少し日が陰った場所の方を好みます。夏になって雑草が生い茂ってもわざわざ草を刈って日光が当たるようにする必要がありません。

6月から10月まで、いつでも植樹可能

まだ葉を開いたばかりのブナの子どもたち。

一般的に植林は春か秋に行いますが、カヤの平は標高1,500mの冷涼な高原地帯なので、夏の時期に植樹しても暑さや乾燥で枯れてしまうことがありません。もっともカヤの平高原は毎年11月になると林道が冬季閉鎖になり、雪が解け去る翌年の6月まで閉ざされてしまいます。カヤの平高原を人が訪れることができるは6月の初めから10月末までの5ヵ月間に限られるのです。この期間ならいつでも植林ができるというのもこの森づくりのユニークな点です。

カッコウの声に迎えられて未来の森へ

リアカー、スコップ、トレイがブナの森づくり3点セット。

活動の数日前に長野県も梅雨入りし、天気が心配されましたが、初日は美しい青空が広がりました。ブナの原生林の中の散策路を、折り畳み式のリアカーにスコップやトレイを積んでゆるやかな勾配を登って行きます。途中で道をそれて牧草地への秘密の入口をくぐると広々とした別世界が広がります。カッコウの声に迎えられて、使われなくなった牧草地の中をブナの稚樹を掘り採るエリアに向かいます。初夏の陽光に輝く新緑は本当に美しく、心も洗われる思いです。掘り採り場所では、茂みの中に入って移植するのに適した稚樹を探します。掘り採った苗は、移植予定地の脇に敷いたブルーシートの上に仮置きしておきます。

約300本のブナを植樹

自分たちで掘り採った苗なので、余計に気持ちが入ります。

2日目の活動は植樹です。あいにくの曇り空でしたが作業をするにはもってこい。暑からず寒からず気持ちよく作業できました。昨日、掘り採った苗を2m間隔で1mの幅に表土を剥ぎ取ったところへ前後左右50cm間隔で植えていきます。雪の重さで折れたり、カモシカやノウサギに食べられたりして数が減ることも考慮して密に植えておきます。この日に植えた約300本のブナの苗たちの中で数十年後まで生き残るのは半数にも満たないでしょう。100年、200年後では数本になっているかもしれません。「大きく育てよ!」と心の中で声をかけながらていねいに植えました。

100年先、200年先に森を届ける

6月の新緑の美しさは言葉にできないほどです。

さて、森ライがブナの森づくりを始めて丸4年。最初の年に植えたブナはもう大人の背丈ほどになりました。植えるときは「本当に大きく育つかな」と正直なところ半信半疑でした。しかし、厳しい冬の風雪に耐えながら育ったブナたちを見ると、森に育っていくんだなとちょっと感動。さらに5年、10年と時が経てばもっと森らしくなっていくことでしょう。森づくりはとんでもなく時間がかかる仕事です。私たちが行っているのは、100年先、200年先に森を残すための小さな努力。人のためだけではなく、カヤの平高原の自然環境やそこに生息するあらゆる動物や昆虫たちのための努力です。次のブナの森づくりは9月。皆さんも未来にブナの森を残す活動に参加してみませんか。

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  • 森林セラピーロードにも指定されている散策路を通っていきます。

  • 秘密の入口を抜けると広々した牧草地が目の前に!

  • 今回は植栽地の奥の方からブナの苗を掘り出します。

  • 茂みの中でゴソゴソ、ゴソゴソ。

  • よさそうな苗を掘り出しました!

  • お昼はロッヂでカレー!おばさんが新鮮なレタスをサービスで出してくれました。

  • 去年、植えたブナの苗を発見!元気に育っていました。

  • スコップで周りの土と一緒に掘り採ります。

  • 森ライスタッフのヒロコ隊員が、植え方のレクチャー。

  • こうやって未来のブナの森がどんどん広がっていきます。

  • 木島平村役場の方も手伝ってくれて無事に終了!

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Voice
─参加者の声─
  • 仁志田竜司さん・友理さん
    彼女に誘われてツリークライミングに参加したのが最初の森ライ活動でした。蓮沼、佐久、八王子に参加して5回目で初めてカヤの平高原デビューです。森ライの活動では、今まで知らなかったことをいろいろ知ることができ、しかも実際に体験できるのがいいですね。苗を掘っているときにいろんな虫がたくさんいて、森の中が生命に満ち溢れているのを実感しました。僕らの手で苗を掘って植えることで、自然のままにしておくよりも早く森になり、それでも結果が見えてくるのは何十年も先と聞いて、壮大なことをやっているのだなあと思いました。森に誘われたのがきっかけで彼女と先日、結婚しました。これからも夫婦で仲良く森づくりを続けたいですね。
  • 大井由美子さん
    森ライの活動に参加するのは久しぶりです。やはり森はいいですね。身も心もリフレッシュできます。カヤの平でのいちばん最初の森づくりに参加しました。そのときに植えた苗が大きくなっているのにびっくり。これがもっと大きく育って森になっていくんだなあと実感できました。ブナを植えた面積も知らない間にこんなに広くなっていて驚きました。カヤの平高原の活動は1泊なので時間もたっぷりあって、皆さんともいろいろなお話ができるので私は好きです。ぜひまたここに来て、植えたブナの苗たちが育っていくのを見たいと思います。
  • 頼本晃良さん
    カヤの平高原には毎年1回は参加しています。これで5回連続の皆勤賞です。自分で苗を採って、自分で植えるというのはなかなかできない体験だと思います。以前、植えたところを見てみたら、ちゃんと育っているのでうれしかったです。最初に植えたのが2013年なので4年経ったわけですけど想像していたより大きくなっていました。順調に森に育っていくのがわかりました。今回は、少し大きな苗を掘って植えてみました。大きな苗は雪の重さで折れてしまうことがあると聞きましたが、来年確かめに来てみようと思います。